区分変更はいつ申請?要介護認定を見直す目安と流れ・相談先

親の介護をしていると、ある日を境に「前より手がかかるようになった」「今のサービスだけでは足りないかもしれない」と感じることがあります。

転倒が増えた。夜中に何度も起きる。食事やトイレの介助が必要になった。認知症の症状が進んで、見守りの時間が増えた。

ひとつひとつは小さな変化に見えても、それが毎日の暮らしの中で重なってくると、家族の生活も少しずつ変わっていきます。

けれど、いざ「区分変更を申請したほうがいいのかな」と思っても、いつ申請すればいいのか、まだ様子を見たほうがいいのか、迷ってしまうものです。

「このくらいで相談していいのかな」

「本人は大丈夫と言っているし」

「申請しても、認定が変わらなかったらどうしよう」

そう考えているうちに、支える家族のほうが先に疲れてしまうこともあります。

区分変更は、今の要介護度が本人の状態や介護の手間に合わなくなったときに、あらためて認定を見直してもらうための手続きです。

申請したからといって、希望どおりに要介護度が変わるとは限りません。けれど、生活の実態と介護サービスの量が合っていないと感じたときは、早めに相談してよいものです。

この記事では、区分変更を申請するタイミングの目安、具体的な変化、申請の流れ、結果が出るまでのつなぎ方を、介護が始まったばかりのご夫婦にもわかりやすく整理します。

【この記事でわかること】
・区分変更を申請するタイミングの考え方
・要介護の変更を考えたい具体的な目安
・ケアマネジャーや市区町村への相談・申請の流れ
・申請結果を待つ間にできるサービス調整
・認定調査で困りごとを伝える記録の残し方
・夫婦で抱え込まないための役割分担

目次

結論:区分変更は「生活が回らない」と感じたら早めに相談する

区分変更は、「今の要介護度では、本人の生活や家族の介護が回りにくくなってきた」と感じたときに、早めに相談するのが基本です。

ここで大切なのは、いきなり申請を決めきらなくてもよい、ということです。まずは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、「今の状態で区分変更を考えたほうがよいでしょうか」と相談するところからで大丈夫です。

【まず押さえたいこと】
区分変更は、今の要介護度と実際の介護量が合わなくなってきたときに相談する手続きです。申請すれば希望どおりに認定が変わるとは限りませんが、迷っている段階でケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してかまいません。

要介護認定は、本人の心身の状態や、日常生活でどれくらい介助が必要かをもとに判断されます。前回の認定時よりも状態が変わっている場合、今の要介護度と実際の介助量が合わなくなることがあります。

たとえば、以前は見守りだけでトイレに行けていたのに、今は立ち上がりや移動に手助けが必要になった。日中だけでなく、夜間も介助や見守りが必要になった。認知症の進行で、火の不始末や外出の心配が増えた。

こうした変化があると、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具などの利用量や内容を見直す必要が出てくることがあります。

もちろん、体調不良が一時的なものなのか、継続的な変化なのかは、状況によって異なります。医療的な背景がある場合は、主治医の見立ても大切です。

だからこそ、家族だけで判断しようとせず、早い段階で相談先につながっておくことが大切になります。

「もう少し頑張れば」で家族が先に疲れ切ることがある

区分変更の相談は、「もう限界です」となってからでないとできないものではありません。

介護は、ひとつひとつの作業だけを見ると「これくらいならできる」と思えることも多いものです。けれど、食事、排泄、服薬、通院、見守り、夜間対応が毎日重なると、負担は少しずつ積み上がります。

特に50代、60代の夫婦世代は、自分たちの仕事、体調、家のこと、夫婦の暮らしもあります。親の介護だけに全力を注げる状況ではない方も少なくありません。

「まだ申請するほどではないかも」

「親本人は大丈夫と言っているし」

「ケアマネさんに大げさだと思われたらどうしよう」

そう思っているうちに、支える家族のほうが疲れ切ってしまうことがあります。

朝の台所に残る湯気を見ながら、今日も一日が始まる。体はもう少し休みたいと言っているのに、やることは待ってくれない。そんな日が続くと、「まだ大丈夫」と言い聞かせること自体が、少しずつ負担になっていきます。

区分変更の相談は、家族の弱音ではありません。本人の状態に合った支援へ近づけるための、必要な確認です。

夫婦で介護を見ている場合も、どちらか一人が「まだ大丈夫」と言い続けていると、もう一方の負担が見えにくくなることがあります。

実親のことだと遠慮が出たり、義親のことだと言い出しにくかったりすることもあります。長く一緒に暮らしてきた夫婦でも、相手のしんどさをすべてわかるわけではありません。

そんなときは、「区分変更するかどうか」をいきなり話し合うより、まずは「今、何が増えているか」を夫婦で書き出すほうが話しやすくなります。

・夜間対応が増えた
・通院付き添いが増えた
・入浴やトイレの見守りが必要になった
・薬の管理を家族が確認するようになった
・家族の睡眠や仕事に影響が出ている

こうした変化が見えてきたら、相談するタイミングと考えてよいでしょう。

真美

まだ申請するほどじゃないのかなって、迷っちゃうよね

信親

迷う段階で、まず相談していいと思う。申請するかどうかは、そのあと一緒に考えればいいからね

区分変更を考えたい目安は「本人の変化」と「家族の負担」

区分変更を考える目安は、「本人の状態が変わったか」と「家族の介助量が増えたか」の両方で見ていくとわかりやすくなります。

要介護度は、病名だけで決まるものではありません。一般的には、日常生活でどれくらい介助が必要か、認知面の変化がどの程度あるか、医療的な管理がどれくらい必要かなどが関係します。

そのため、「病気があるから区分変更」と考えるより、「生活の中で必要な支援が増えたから相談する」と見たほうが、家族には判断しやすくなります。

たとえば、次のような変化が続いている場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに伝えてみましょう。

【区分変更を考えたい変化】
・立ち上がりや歩行が不安定になった
・転倒や転びそうになる場面が増えた
・入浴や排泄に介助が必要になった
・食事量が減った、むせることが増えた
・夜間のトイレや見守りが増えた
・認知症の症状が進み、見守りの時間が増えた
・薬の管理が難しくなった
・退院後に以前の生活へ戻りにくくなった
・今のサービス量では家族の負担が大きい

ひとつ当てはまったからすぐ申請、ということではありません。大切なのは、「前回の認定時と比べてどう変わったか」を見ることです。

以前は何でもないと思っていた段差が、今は少し怖く見える。本人の歩き方を見ながら、つい手を差し出す回数が増えている。そんな小さな変化も、暮らしの中では大切なサインになります。

身体面の変化:できていた動作に介助が必要になった

身体面では、ADLの低下がひとつの目安になります。

ADLとは、食事、排泄、着替え、入浴、移動など、日常生活に必要な基本的な動作のことです。以前は一人でできていたことに介助が必要になると、介護の手間は大きく変わります。

たとえば、次のような変化です。

・ベッドから起き上がるときに支えが必要になった
・トイレまで一人で歩けなくなった
・入浴時に転倒の心配が強くなった
・着替えに時間がかかり、声かけや手助けが必要になった
・食事中にむせることが増えた

こうした変化が続くと、家族だけで支えるのが難しくなることがあります。

転倒後、入院後、病気の悪化後などは、生活の状態が一気に変わることもあります。その場合は、主治医やケアマネジャーに早めに状況を伝え、介護サービスや福祉用具の見直しも含めて相談すると安心です。

家族としては、「昨日まではできていたのに」と受け止めきれないこともあります。正直に言えば、本人の変化よりも、自分の心が追いつかないことのほうがつらい日もあるかもしれません。

でも、その戸惑いも含めて、今の状態を誰かに伝えてよいのだと思います。

認知面の変化:見守りの時間が増えてきた

認知面では、認知症の進行などによって、見守りの時間が増えることがあります。

たとえば、次のような場面です。

・火の消し忘れがある
・薬の飲み忘れが増えた
・財布や鍵を何度も探す
・同じ話を繰り返す
・昼夜逆転がある
・夜間に不安が強くなる
・外に出て戻れなくなる心配がある

こうした変化は、身体介助のように目に見えやすい負担ではないかもしれません。けれど、家族にとっては「目を離せない時間」が増えるため、心身の負担が大きくなります。

何度も同じことを聞かれたとき、やさしく答えたいと思っているのに、つい声がきつくなってしまうこともあります。あとで食卓に座ったまま、「あんな言い方をしなくてもよかった」と思う夜もあるかもしれません。

それも、家族が冷たいからではありません。見守り続ける緊張が、知らないうちに積み重なっていることがあります。

また、急な混乱やせん妄のような症状が見られる場合は、医療的な確認も大切です。

せん妄は、体調不良、薬、入院、環境の変化などをきっかけに、一時的に強い混乱が出ることがあります。認知症の進行と区別が難しいこともあるため、急な変化があるときは主治医に相談しましょう。

医療管理の変化:主治医や訪問看護との連携が必要になることもある

医療管理では、服薬管理、インスリン、酸素療法、褥瘡の処置、訪問看護の必要性などが関係する場合があります。

医療的な支援が必要になったときは、主治医、訪問看護、ケアマネジャーと連携しながら、介護サービス全体を見直すことが必要になることもあります。

ただし、区分変更を申請すれば、希望どおりに要介護度が変わるとは限りません。認定結果は、認定調査や主治医意見書などをもとに判断され、個別事情によって変わります。

だからこそ、「上がるかどうか」だけに目を向けるのではなく、「今の困りごとを正確に伝える」ことを大切にしましょう。

夫婦で見ている場合は、実際に介助している人と、離れて見ている人で受け止め方が違うこともあります。

「そんなに大変?」と感じる側も、悪気があるとは限りません。毎日そばで見ている人にしかわからない疲れもあれば、少し距離があるからこそ気づける変化もあります。

まずは、起きていることを事実として共有するところから始めてみてください。

【医療面の変化は主治医にも相談する】
急な混乱、転倒後の痛み、食事中のむせ、服薬管理の乱れ、医療処置の必要性などがある場合は、介護サービスだけでなく医療面の確認も大切です。主治医、訪問看護師、ケアマネジャーに状況を伝え、必要な支援を相談してみてください。

区分変更の申請は「ケアマネに相談→市区町村へ申請」が基本

区分変更を考えたら、まずは担当のケアマネジャーに相談するのが進めやすい流れです。

すでに介護サービスを利用している場合、多くは担当ケアマネジャーがついています。ケアマネジャーは、本人の状態やサービス利用状況を見ながら、区分変更の必要性や、今できる調整を一緒に考えてくれます。

まだケアマネジャーがいない場合、要支援の方、これから介護保険を使おうとしている方は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口に相談するとよいでしょう。

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしや介護の相談を受ける地域の窓口です。

「区分変更かわからないけれど、親の状態が変わってきた」

という段階でも相談できます。

電話をかける前は、少し身構えてしまうかもしれません。うまく説明できるだろうか、こんなことで相談していいのだろうかと、受話器を持つ手が止まることもあります。

でも、全部をきれいに話せなくても大丈夫です。「最近、家で困ることが増えてきました」と伝えるだけでも、相談の入口になります。

一般的な申請の流れ

区分変更の一般的な流れは、次のようになります。

・ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村窓口に相談する
・区分変更申請を行う
・認定調査を受ける
・主治医意見書が作成される
・審査判定が行われる
・新しい認定結果が通知される
・結果に応じてケアプランやサービスを見直す

申請先は、本人が住んでいる市区町村の介護保険担当窓口です。

申請は本人や家族が行うこともできますが、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどが支援してくれる場合もあります。具体的な扱いは自治体や状況によって異なるため、窓口や担当者に確認すると安心です。

申請後は、認定調査員が本人の状態を確認します。

このとき、本人が普段よりしっかり受け答えしたり、「一人でできます」と答えたりすることがあります。家族から見ると「本当はもっと困っているのに」と感じる場面もあるかもしれません。

そのため、調査の場では、普段の様子を家族が補足できるようにしておくとよいでしょう。

可能であれば、日頃の介助内容や困りごとをメモにしておくと、伝え忘れを減らせます。

【家族だけで判断しすぎない】
区分変更が必要かどうかは、本人の状態、介護の手間、医療面、現在使っているサービス量などを合わせて考える必要があります。迷う場合は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村窓口に相談し、申請するかどうかを一緒に整理しましょう。

ケアマネジャーに伝えるときは「何を増やしたいか」まで話せるとよい

区分変更は、ケアマネジャーと一緒に進めると、状況の整理がしやすくなります。

ケアマネジャーは、現在のサービス利用状況や本人の生活を把握しているため、次のようなことを具体的に考えやすい立場にいます。

・何が足りていないか
・どのサービスを増やしたいのか
・今の要介護度で対応できる範囲はどこまでか
・区分変更を検討したほうがよい状態か

たとえば、次のような希望がある場合は、そのまま伝えて大丈夫です。

・訪問介護の回数を増やしたい
・デイサービスを追加したい
・ショートステイを利用したい
・福祉用具を見直したい
・夜間対応の負担を減らしたい
・退院後の生活を整えたい

今の認定区分でできる調整と、区分変更を検討する必要がある部分を確認できます。

申請から結果が出るまでには、一定の時間がかかることがあります。その間のサービス調整も含めて、早めに相談しておくほうが現実的です。

夫婦で相談する場合は、ケアマネジャーへの連絡をどちらか一人に任せきりにしないことも大切です。

主に連絡する人を決めておくのはよいのですが、もう一方も内容を共有しておくと、「そんな話は聞いていない」というすれ違いを減らせます。

相談前に、夫婦で短くメモを作っておくのもおすすめです。

・いつ頃から変化が出たか
・何に介助が必要になったか
・夜間対応があるか
・転倒やヒヤリとした場面があったか
・今のサービスで足りないことは何か
・家族の負担がどこに出ているか

このくらいで十分です。完璧な資料を作ろうとしなくて大丈夫です。

夕方の部屋に差し込む光の中で、夫婦で少しだけメモを見返す。会話は多くなくても、「ここは困っているよね」と同じ紙を見る時間があるだけで、負担の見え方が少し変わることもあります。

真美

ケアマネさんに連絡するのって、ちょっと身構えちゃうよね

信親

でも、困りごとを一緒に整理する相手だからね。全部まとまっていなくても相談していいと思うよ

申請結果を待つ間も、サービス調整や短期入所を相談してよい

区分変更の結果を待つ間も、今の生活が苦しいなら、つなぎの支援を考えてよいです。

区分変更は、申請してすぐに結果が出るものではありません。認定調査や主治医意見書、審査判定などの流れがあるため、その間も介護は続きます。

そのため、「結果が出るまで何もできない」と思い込まないことが大切です。

現在の要介護度や利用状況の範囲内で、サービスの組み替えや一時的な支援を検討できる場合があります。

たとえば、次のような調整です。

・デイサービスの回数を見直す
・訪問介護の内容や時間帯を相談する
・福祉用具を見直す
・訪問看護につなげる
・ショートステイを利用する
・家族の見守り体制を一時的に組み直す

利用できるサービスや回数、費用負担は、要介護度、ケアプラン、地域の事業所の空き状況によって異なります。ここも、ケアマネジャーと相談しながら進めるのが安心です。

特に、夜間対応が続いて家族が眠れない、転倒が増えて目が離せない、認知症の症状で一日中見守りが必要になっている、といった場合は、家族の休息も含めて考える必要があります。

ショートステイは、短期間施設に泊まって介護を受けるサービスです。家族の休息、急な用事、介護体制の立て直しなどに使われることがあります。

ただし、空き状況や本人の状態によって利用しやすさは変わるため、早めに相談しておくとよいでしょう。

「今夜が不安」なときは安全と休息を優先する

区分変更の話とは別に、「今夜が不安」という場面もあります。

夜間に何度も起きる。トイレに間に合わない。転倒しそうで眠れない。急に混乱して家を出ようとする。

こうした状態があると、家族の心身は一気に消耗します。

今夜を乗り切るためには、制度の大きな話よりも、まず安全と休息を優先して考えましょう。

たとえば、次のような工夫があります。

・ベッド周りの転倒しやすい物を片づける
・足元灯をつける
・夜間のトイレ動線を短くする
・ポータブルトイレや手すりの相談をする
・家族が交代で眠れる時間を作る
・翌朝、ケアマネジャーへ連絡する

ただし、急な意識の変化、強い混乱、発熱、脱水、転倒後の強い痛み、ろれつが回らない、片側の手足が動きにくいなど、医療的に気になる症状がある場合は、主治医、救急相談、必要に応じて救急受診を検討してください。

医療判断は、家族だけで抱え込まないことが大切です。

また、家族だけで夜間対応を続けるのが難しい場合は、ケアマネジャーに「夜が限界に近い」と具体的に伝えましょう。

「大変です」だけでは伝わりにくいこともあるので、次のように事実で伝えると支援策を考えやすくなります。

・夜中に3回起きる
・転倒が2回あった
・家族がほとんど眠れていない
・翌日の仕事に支障が出ている

夫婦で介護している場合は、夜間対応を一人に寄せない工夫も必要です。

毎日は無理でも、曜日で分ける、早朝だけ交代する、連絡役と現場対応を分けるなど、続けられる形を探していきましょう。

眠れない夜が続くと、人は思っている以上に余裕をなくします。いつもなら流せる一言に傷ついたり、言わなくてもいい言葉を返してしまったりすることもあります。

そんなときは、気持ちの問題だけで片づけず、「眠れていない」という事実も支援者に伝えてください。家族の休息は、介護を続けるための大切な条件です。

【相談できる先】

・ケアマネジャー
・地域包括支援センター
・市区町村の介護保険窓口
・主治医
・訪問看護師
・退院支援担当者
・医療ソーシャルワーカー
・福祉用具専門相談員

認定調査では「普段の困りごと」をメモで伝える

区分変更の申請で大切なのは、本人の状態を良く見せようとしすぎず、普段の困りごとを具体的に伝えることです。

認定調査の日だけ、本人がいつもより頑張ってしまうことがあります。調査員の前ではしっかり歩こうとしたり、「一人でできます」と答えたりすることもあります。

家族としては、「本当は違うのに」と焦るかもしれません。

でも、本人が悪気なくそう答えることもあります。できないことを認めたくない気持ちがあったり、家族以外の人の前でしっかりしようとしたりすることもあります。

だからこそ、家族は本人を責めるのではなく、普段の状態を静かに補足する準備をしておくとよいでしょう。

たとえば、次のような伝え方です。

・今日はできていますが、普段は立ち上がりに手を貸しています
・この1か月で転倒がありました
・夜間は家族が声をかけないとトイレに行けません
・薬は本人が飲んだと言いますが、実際には飲み忘れがあります
・入浴は一人では不安なので、毎回家族が見守っています

このように、事実を伝える形で十分です。

大げさに言う必要はありません。反対に、遠慮して軽く言いすぎる必要もありません。

区分変更は、家族の頑張りを見せる場ではなく、本人の生活に合った支援を考えるための材料を伝える場です。

また、主治医意見書も認定に関係します。受診時に、家での変化や介助量を医師に伝えておくと、医師が生活状況を把握しやすくなります。

診察室では本人が元気に見えることもあるため、家族のメモが役立つことがあります。

困りごとの記録は一行でも十分

記録は、きれいにまとめなくても大丈夫です。

スマートフォンのメモ、カレンダー、ノートなど、続けやすい形で残しましょう。

【記録しておきたいこと】
・日付
・起きたこと
・必要だった介助
・かかった時間
・家族が困ったこと
・転倒やヒヤリとした場面
・夜間対応の回数
・認知面の変化
・受診や薬の変更

たとえば、次のような書き方で十分です。

「5月3日 夜2時、トイレに行こうとして転びかけた。夫が支えて移動。本人は覚えていない様子」

「5月6日 朝食後の薬を飲み忘れ。声かけしても“もう飲んだ”と言う。薬箱を確認して家族が介助」

「5月8日 デイサービスに行く準備ができず、着替えに30分以上かかった。声かけと一部介助が必要」

このように書いておくと、認定調査、ケアマネジャーへの相談、主治医への説明がしやすくなります。

夫婦で記録する場合は、片方だけが全部書く必要はありません。気づいた人が短く残すだけでも十分です。

たとえば、夫が夜間の様子をメモし、妻が通院や服薬の様子をメモする。または、共有メモアプリやカレンダーに一言だけ残す。

そのくらいでも、あとから状況を思い出す手がかりになります。

大事なのは、完璧な記録ではなく、困りごとが見えることです。

ただし、本人の前で記録を見せると傷つけてしまう場合もあります。本人の尊厳に配慮しながら、必要な場面で支援者に伝えるためのメモとして扱いましょう。

介護の記録は、誰かを責めるためのものではありません。本人ができなくなったことを並べるためでもありません。

あとから家族自身が、「あのとき、ちゃんと困っていたんだ」と確認するための手がかりにもなります。うまく言葉にできなかったしんどさを、少しだけ外に出しておくもの、と考えてもよいのかもしれません。

真美

メモって聞くと、ちゃんと書かなきゃって思っちゃうんだよね

信親

一行でも十分だと思う。あとで思い出せる手がかりがあれば助かるからね

夫婦で抱え込まないために、相談役と共有役を分けておく

区分変更を考える時期は、本人の状態だけでなく、家族の暮らしも揺れやすい時期です。

サービスが足りない。夜が眠れない。親本人は「大丈夫」と言う。でも、支える側はもうしんどい。

こうした状況が続くと、夫婦の間でも温度差が出やすくなります。

実親の介護では、実子側が「自分がやらなきゃ」と抱え込みがちです。義親の介護では、配偶者側が「どこまで言っていいのかわからない」と遠慮することもあります。

どちらが悪いという話ではありません。

ただ、情報や負担が片方に偏りすぎると、あとからすれ違いが起きやすくなります。

長く一緒にいても、相手の心の疲れまでは見えないことがあります。言えばいいだけの「手伝ってほしい」が、なぜか言葉にならない日もあります。

だからこそ、まだ話せるうちに、少しだけ役割を分けておくことが大切です。

分担は「平等」より「続けられる形」で考える

区分変更の申請や相談では、次のような役割が出てきます。

・ケアマネジャーへ連絡する
・地域包括支援センターや市区町村窓口に確認する
・主治医に家での様子を伝える
・認定調査の日程を調整する
・困りごとのメモを残す
・兄弟姉妹に状況を共有する
・サービス変更後の費用を確認する

これらを全部ひとりで抱えると、かなりの負担になります。

夫婦でできるなら、役割を「半分ずつ」に分けるより、得意不得意や時間の都合で分けるほうが続けやすいことがあります。

【夫婦で分けておきたいこと】
・ケアマネジャーへ主に連絡する人
・困りごとをメモする人
・費用やサービス内容を確認する人
・通院や面談の内容を共有する人
・兄弟姉妹へ状況を伝える人

このくらいの分担でも十分です。

大切なのは、「何も知らない人」と「全部知っている人」に分かれないことです。

介護の負担は、体を動かす作業だけではありません。電話する、予定を調整する、制度を調べる、親の不安を受け止める、兄弟姉妹に連絡する。

こうした見えない負担も、積み重なると疲れになります。

夫婦のどちらかが限界に近いときは、区分変更の相談とあわせて、家族の負担もケアマネジャーに伝えてください。

在宅介護を続けるためには、本人だけでなく、支える家族の生活も大切な情報です。

夫婦で同じように頑張れなくてもかまいません。得意なことも、動ける時間も、体調も違います。昔のように無理がきかない年齢になったからこそ、「できる人が全部やる」ではなく、「続けられる形」を探すことが必要になります。

まとめ:迷ったら「今の困りごと」をケアマネや包括に伝える

区分変更を申請するタイミングは、「生活が回らなくなってから限界まで我慢する」のではなく、「今の要介護度と実際の介護量が合わなくなってきた」と感じた段階で相談するのが目安です。

特に、次のような変化が増えているなら、早めに相談してよいタイミングです。

・立ち上がりや歩行が不安定になった
・転倒やヒヤリとする場面が増えた
・入浴、排泄、食事などに介助が必要になった
・夜間対応が増え、家族が眠れない
・認知症の症状や見守りの負担が増えた
・服薬や医療管理が難しくなった
・今のサービス量では生活が回りにくい

区分変更は、申請すれば希望どおりに要介護度が変わるものではありません。結果は、認定調査や主治医意見書、本人の状態などをもとに判断されます。

けれど、申請するかどうかを含めて相談することは、家族が抱え込みすぎないための大切な一歩です。

【今日できる最小の一手】
この1週間で増えた困りごとを、3つだけメモしてみてください。「夜中に起きる回数が増えた」「入浴の見守りが必要になった」など、短い一行で大丈夫です。そのメモが、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するときの手がかりになります。

全部を一度に整えなくても大丈夫です。

介護は、家族の頑張りだけで支えるものではありません。本人の状態が変わったなら、支援の形も変えてよいのです。

迷ったら、「区分変更したほうがいいですか」と聞く前に、

「今、こういうことで困っています」

と伝えてみてください。

そこから、必要な申請やサービス調整につながっていきます。

夫婦だけで抱え込まず、まずは今の困りごとを言葉にする。

大きく変わったわけではなくても、少しだけ見方が変わることがあります。完璧に準備できなくても、相談につながるだけで、次の一歩は見えやすくなります。

真美

“申請します”って決めてから相談しなきゃと思ってたけど、そうじゃなくていいんだね

信親

うん。まずは今の困りごとを伝えるだけで十分だよ。そこから一緒に考えてもらえばいい

介護は、いつもきれいに段取りよく進むわけではありません。

迷いながら、言葉にしながら、相談しながら、少しずつ今の暮らしに合う形を探していく。その歩幅で、十分なのだと思います。

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