主治医意見書とは?家族ができる準備と伝え方

親の介護を考え始めると、「要介護認定」「主治医意見書」「認定調査」など、聞き慣れない言葉が急に増えてきます。言葉だけを見ると、どれも少し堅くて、どこか役所や病院の中だけで進んでいくもののように感じるかもしれません。

けれど実際には、その一つひとつが、親のこれからの暮らしや、支える家族の毎日に関わってきます。なかでも主治医意見書は、家族が直接書くものではありません。

だからこそ、

「こちらから何か準備したほうがいいのかな」

「医師にどこまで伝えていいのだろう」

「本人の前では言いにくいことを、どう扱えばいいのだろう」

と迷いやすいところです。

親の前では言葉を選びますし、診察室では時間も限られています。ふだん家の中では気になっていることも、いざ医師を前にすると、うまく言えなくなることがあります。

正直に言えば、「これを言ったら親を傷つけるのではないか」と感じることもあります。物忘れのこと。薬の飲み忘れのこと。お風呂やトイレでの不安。火の消し忘れ。

本人は「大丈夫」と言っているけれど、家族から見ると少し心配なこと。そうしたことは、頭では「伝えたほうがいい」とわかっていても、なかなか言葉にならないものです。

でも、最初から制度を完璧に理解しようとしなくても大丈夫です。大切なのは、病名や診断名だけでなく、親が日常生活の中でどんなことに困っているのかを、医師に伝わりやすい形で整理しておくことです。

この記事では、主治医意見書とは何か、要介護認定でどのように関係するのか、家族が受診前にできる準備や伝え方を、介護が初めての方にもわかりやすく整理していきます。

【この記事でわかること】
・主治医意見書とは何か、要介護認定でどんな役割があるのか
・医師に伝えておきたい身体・認知・医療管理のポイント
・受診前に家族が作っておきたいメモの内容
・診察時に短く事実で伝えるコツ
・うまく伝わらないときの相談先や次の動き方
・夫婦で情報を抱え込みすぎない準備のしかた

目次

結論:主治医意見書は生活の困りごとが鍵になる

主治医意見書とは、要介護認定の際に、本人の心身の状態や医療上の注意点などについて、主治医が作成する書類です。

要介護認定では、市区町村などによる認定調査の結果と、主治医意見書などをもとに、介護の必要度が総合的に判断されます。細かな運用は自治体や状況によって異なることがありますが、主治医意見書は、本人の状態を医療面から確認する大切な資料のひとつです。

【まず押さえたいこと】
主治医意見書は家族が書く書類ではありません。ただし、医師が診察室だけでは見えにくい生活の困りごとを把握できるように、家族が短いメモを用意して伝えることはできます。病名だけでなく、日常生活で何に困っているかが大切な情報になります。

ここで家族が知っておきたいのは、医師が見るのは「病名」だけではないということです。同じ病気があっても、生活への影響は人によって違います。

たとえば、次のようなことです。

・一人で歩けるが、最近よく転びそうになる
・薬の飲み忘れが増えてきた
・食事はできるが、準備や片づけは難しい
・物忘れがあり、火の消し忘れが心配
・入浴や着替えに時間がかかるようになった
・家族が声をかけないと、受診や服薬が続きにくい

こうした「暮らしの中の困りごと」は、診察室だけでは見えにくいことがあります。本人が遠慮して「大丈夫です」と言ったり、診察の日だけ少ししっかり見えたりすることもあります。

家では困っているのに、医師の前ではいつもより受け答えがはっきりする。介護の入口では、そうした場面も少なくありません。

家族としては、そこで少し迷います。

「今日は元気そうだから、言わなくてもいいかな」

「先生の前でこんな話をしたら、本人が嫌な気持ちになるかな」

「でも、家では本当に困っているんだけどな」

そんなふうに、診察室の椅子に座りながら、頭の中だけで言葉が行ったり来たりすることがあります。

だからこそ、家族がふだんの様子をメモにしておくことが役立ちます。主治医意見書そのものを書くのは医師です。ただ、医師が状態を把握しやすくなるように、家族が情報を整理して伝えることはできます。

家族メモは、生活の実態を伝える補助になる

家族メモは、医師に「生活の実態」を伝えるための補助資料です。診察時間は限られています。その場で思い出しながら話そうとすると、大事なことが抜けてしまうこともあります。

特に、転倒、服薬、認知面の変化、介助が必要な場面は、日々の小さな積み重ねです。家族にとっては当たり前になりすぎていて、いざ聞かれるとうまく言葉にしにくいこともあります。

朝の台所で薬の袋を見ながら、「昨日の分、飲んだのかな」と思う。洗面所の前で、少し足元がふらついた親を見て、思わず手を伸ばす。夕方、火を使わせていいのかどうか、ふと不安になる。

そういう小さな場面は、わざわざ口にするほどではないように見えて、実は暮らしの変化を表していることがあります。

メモに、難しい医療用語を書く必要はありません。たとえば、こんな書き方で大丈夫です。

・週に何回くらい転びそうになる
・薬を飲んだか、本人だけでは確認できない
・夜中に何度も起きて、家族が対応している
・買い物に行くと、帰り道が不安になる
・入浴のとき、浴槽をまたぐ場面で支えが必要

家族が見ている事実を、短く書くだけで十分です。大切なのは、「困っています」だけで終わらせず、何に、どのくらい、誰の手助けが必要なのかを添えることです。

たとえば、「歩行が不安」よりも、「室内は歩けるが、玄関の段差でつまずくことが週に数回ある」のほうが、状態が伝わりやすくなります。

夫婦で親の介護に関わっている場合は、片方だけが思い出して書くよりも、二人で少し確認しながらメモを作ると、見落としが減りやすくなります。

実親と義親では、見え方が違うこともあります。実の子は「まだ大丈夫」と思いたくなることがあります。反対に、義理の立場のほうが少し客観的に変化に気づくこともあります。

それは悪いことではありません。違う視点があるからこそ、生活全体が見えやすくなる場合もあります。

ただ、夫婦で話すときにも、少し照れやためらいが出ることがあります。「うちの親のことを悪く言われた」と受け取ってしまう日もあるかもしれません。

反対に、「そこまで言わなくても」と言ってしまったあとで、本当は相手の不安を受け止めたほうがよかったのかもしれないと、あとから気づくこともあります。

介護の準備は、制度だけでなく、夫婦の気持ちのすり合わせでもあります。

今日ひとつやるなら、まずは「最近気になったこと」を3つだけ書いてみてください。完璧なメモにしようとしなくても大丈夫です。冷蔵庫の横に置いた紙でも、スマートフォンのメモでもかまいません。

思い出したときに一行だけ残しておくだけでも、次の受診で助けになることがあります。

真美

診察室だと、親も急にしっかり話したりするんだよね。家での様子と違って、あれ?ってなることあるかも

信親

あるだろうね。こっちも、その場になると言いにくくなるしな。普段の困りごとをメモにしておくといいと思うよ

主治医意見書で見られるポイントは身体・認知・医療管理

主治医意見書では、本人の病気だけでなく、身体の状態、認知機能、医療的な管理の必要性などが確認されます。

家族としては、「どんなことを伝えればいいのか」を大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。

身体の状態

まずは、身体の状態です。歩く、立ち上がる、座る、食べる、着替える、入浴する、トイレに行く。こうした日常生活の動作に、どのくらい支障があるかを見ます。

たとえば、次のようなことです。

・転びやすい
・ふらつく
・疲れやすい
・痛みがある
・手足が動かしにくい
・立ち上がりに時間がかかる
・入浴や着替えに見守りが必要

「できる・できない」だけでなく、「できるけれど危ない」「時間がかかる」「声かけが必要」といったことも大切な情報になります。

家族から見ると、「まだ自分でできている」と思うことでも、実際には近くで見守っていたり、何度も声をかけていたりすることがあります。その見守りや声かけも、生活を支えている大事な介助のひとつです。

昔は何でも一人でできていた親が、椅子から立ち上がるときにテーブルへ手をつく。玄関の段差で、ほんの少し足が止まる。外では平気そうにしていても、家に帰ると疲れてしばらく動けない。

そうした変化を見ると、家族のほうも戸惑います。「年齢のせいだろう」と思いたい気持ちもあります。「まだ介護というほどではない」と感じることもあります。

けれど、そういう小さな変化を見逃さずに残しておくことが、必要な支援を考えるきっかけになります。

認知面や精神面の変化

次に、認知面や精神面の変化です。物忘れが増えた、同じ話を何度もする、日時や場所がわかりにくい、怒りっぽくなった、不安が強い、昼夜逆転がある、火の管理が心配。こうした変化は、家の中で一緒に過ごしている家族のほうが気づきやすいことがあります。

ここで大切なのは、家族が「認知症かどうか」を判断しようとしすぎないことです。診断は医師に相談するものです。家族は、「こんな様子があります」と事実として伝えれば大丈夫です。

たとえば、次のように整理できます。

・同じ予定を何度も確認する
・薬を飲んだか覚えていないことが増えた
・火を消し忘れたことがある
・財布や通帳を何度も探している
・夜中に起きて家の中を歩くことがある

こうした日常の変化は、診察室だけでは見えにくいことがあります。本人が「忘れていない」と言うこともありますし、家族も「年齢のせいかもしれない」と迷うことがあります。

その迷いも含めて、医師に相談する材料になります。

認知面の変化は、家族にとっても言い出しにくいものです。「お母さん、最近忘れっぽいよ」と言っただけで、少し険しい空気になることもあります。

本人も不安なのだと思います。できていたことができなくなる怖さは、きっと本人にしかわからない部分があります。家族も、そこをわかっているからこそ、言葉を選びすぎて黙ってしまうことがあります。

けれど、黙ったままにしていると、生活の中の危険や不安が見えにくくなってしまいます。責めるためではなく、これからの暮らしを整えるために伝える。その姿勢を忘れないようにしたいところです。

服薬や医療管理の必要性

3つ目は、医療管理の必要性です。服薬管理、通院、注射、処置、血糖測定、酸素療法、褥瘡のケアなど、医療的な支援や注意が必要な場合があります。

たとえば、薬の種類が多くて本人だけでは管理が難しい。通院に付き添いが必要。体調の変化を家族が見守っている。こうしたことも、生活を考えるうえで大切な情報です。

薬の袋がテーブルに残っている。服薬カレンダーの曜日がずれている。通院の日を何度も確認する。そういう場面が続くと、家族はだんだん気を張るようになります。

最初は「ちょっと確認するだけ」だったことが、いつの間にか毎日の役割になっていることもあります。それでも、家族自身は「このくらいなら介護ではない」と思ってしまいがちです。

でも、服薬を確認することも、通院に付き添うことも、体調の変化に気づくことも、暮らしを支える大事な関わりです。

内容によっては、訪問看護やケアマネジャーとの連携が必要になることもあります。このあたりは家庭だけで判断しきれないことも多いため、主治医や地域包括支援センター、すでに担当がいる場合はケアマネジャーに相談しながら進めていくと安心です。

日常生活の具体例が伝わりやすい

主治医意見書に関わる情報を伝えるときは、日常生活の具体例が大切です。「足が悪いです」だけでは、どの程度生活に影響しているのかが伝わりにくいことがあります。

たとえば、次のように言い換えると、医師が状態をイメージしやすくなります。

【医師に伝えやすい生活の具体例】
・最近、買い物の帰りに休憩しないと歩けません
・家の中では歩けますが、外では杖がないと不安です
・浴槽をまたぐときに家族が支えています
・トイレは自分で行きますが、夜間は間に合わないことがあります
・服薬カレンダーを使っても、飲み忘れがあります
・鍋を火にかけたまま忘れたことがあります

ポイントは、できないことだけを伝えることではありません。

「できるけれど見守りが必要」

「声かけがあればできる」

「時間がかかる」

「日によって差がある」

こうした状態も、介護の必要性を考えるうえで大切です。

家族が毎日している声かけや見守りは、家族にとっては当たり前になっているかもしれません。けれど、本人の生活を支えるためには欠かせない情報です。

特に夫婦で親を見ている場合、「自分がやっていることは介護というほどではない」と思ってしまうことがあります。でも、服薬確認、通院の付き添い、買い物の代行、転倒しないような見守りも、生活を支える大切な役割です。

夫婦のどちらか一人だけがその役割を担っている場合は、その負担も見えにくくなりがちです。医師や相談先に伝えるときは、「本人の状態」とあわせて「家族がどんな支援をしているか」も整理しておくとよいでしょう。

言いにくいことほど、あとまわしになりやすいものです。でも、あとまわしにしている間にも、支えている人の疲れは少しずつ積もっていきます。

朝から体が重い日。仕事の合間に通院の予定を確認する日。食卓で会話が途切れたまま、言えなかった「大丈夫?」だけが残る日。

介護の準備は、そういう小さな疲れを見える形にすることでもあります。

真美

声かけくらいだと、わざわざ言っていいのかなって思っちゃうかも

信親

でも、その声かけがないと生活が回らないなら、大事な情報だよ

受診前のメモは症状・頻度・危険・介助で作る

受診前のメモは、「症状」「頻度」「危険」「介助」の4つに分けると作りやすくなります。

主治医意見書のために、家族が特別な書式を用意しなければならないわけではありません。自治体や医療機関によって対応は異なるため、心配な場合は事前に確認しておくと安心です。

家族メモは、医師に渡しやすいように、A4用紙1枚程度にまとめるのがおすすめです。長すぎると読みにくくなるため、まずは要点をしぼりましょう。

書き始めるまでは、少し気が重いかもしれません。親の困りごとを紙に書くというのは、どこかで「親が弱ってきたこと」を認める作業でもあります。

昔は自分を叱っていた親。何でも一人で決めていた親。その親の変化を、家族がメモにする。それは、思っている以上に心が揺れることです。

だから、最初からきれいにまとめなくても大丈夫です。まずは、思いつくことを短く書くところからで十分です。

症状:本人に起きている変化を書く

「症状」は、本人に起きている変化です。痛み、ふらつき、息切れ、むくみ、食欲低下、眠れない、物忘れ、気分の落ち込みなど、気づいたことを書きます。

医療的な判断は医師が行います。家族は、見たまま、聞いたままを記録すれば大丈夫です。

たとえば、「最近よく疲れると言う」「夕方になると不安そうにする」「食事の量が以前より減った」など、生活の中で見えた変化を書いておきましょう。

言葉にすると、少し大げさに感じることもあります。「疲れやすい」と書くほどなのか。「不安そう」と言い切っていいのか。そんなふうに迷うかもしれません。

その場合は、「家族から見ると」「以前より」「最近増えたように感じる」といった表現でもかまいません。断定するためではなく、医師に相談するためのメモです。

頻度:どのくらい起きているかを書く

「頻度」は、どのくらい起きているかです。毎日なのか、週に数回なのか、月に数回なのか。時間帯や場面が決まっているなら、それも書いておくと伝わりやすくなります。

たとえば、次のような形です。

・夜だけふらつきやすい
・夕方になると不安が強くなる
・週に2〜3回、薬の飲み忘れがある
・この1か月で2回転びそうになった

頻度がはっきりわからない場合は、「最近増えている」「先月より目立つようになった」という書き方でもかまいません。大事なのは、家族が感じている変化を、できるだけ具体的な形にしておくことです。

人の記憶は、思っているよりあいまいです。受診の場では、「いつ頃からですか」と聞かれても、急に答えられないことがあります。

だからこそ、思い出した日のうちに少しだけ残しておくと、あとで助かります。

危険:事故につながりそうなことを書く

「危険」は、事故につながりそうなことです。転倒、火の不始末、飲み間違い、外出して帰れなくなりそう、夜間に一人で動いてしまうなどがあります。

実際に事故が起きていなくても、「ヒヤッとしたこと」は大切な情報です。「まだ事故にはなっていないから言わなくていい」と思わず、家族が心配していることとしてメモしておきましょう。

親を悪く言うためではありません。これからの生活を安全に整えるための情報です。

たとえば、鍋の火がついたままだったとき。階段で足を踏み外しそうになったとき。夜中に廊下を歩く音がして、慌てて起きたとき。

その瞬間は心臓が少し強く鳴っても、翌日になると「まあ何もなかったから」と流してしまうことがあります。でも、その「何もなかった」は、たまたまかもしれません。

家族が感じた不安は、生活を見直す大事なサインです。

介助:家族が手伝っていることを書く

「介助」は、家族が手伝っていることです。入浴時に支える、薬をセットする、通院に付き添う、食事を用意する、排泄の後始末を手伝う、夜間に起きて対応する。そうした支援を、誰がどのくらいしているかを書きます。

ここで気をつけたいのは、本人を悪く見せようとしないことです。主治医に伝える目的は、本人を責めることではありません。必要な支援につなげることです。

家族がしていることを言葉にすると、「こんなにやっているのか」と自分でも驚くことがあるかもしれません。それは、弱音ではありません。暮らしを支えるために必要な情報です。

むしろ、家族ほど自分の負担を小さく見積もってしまうことがあります。

「これくらい普通」

「みんなやっている」

「自分がもう少し頑張ればいい」

そう思ってしまう日もあります。

でも、無理を続けることが当たり前になると、支える側の暮らしが少しずつ削られていきます。介助の内容を書くことは、「大変です」と訴えるためだけではありません。

必要な支援を考えるために、今の暮らしを見える形にすることです。

家族メモのテンプレ

以下のような形で、簡単にまとめておくと使いやすくなります。

【受診前にまとめたい家族メモ】

・基本情報:本人の名前、年齢、同居・別居の状況、主に関わっている家族
・身体の様子:歩行、転倒、入浴、食事、トイレなどで困っていること
・認知面や気持ちの変化:物忘れ、判断、火の管理、不安、昼夜逆転など
・服薬や医療管理:薬の飲み忘れ、通院付き添い、在宅で必要な医療的ケアなど
・家族がしている介助:服薬確認、買い物、食事準備、入浴見守り、夜間対応など
・医師に相談したいこと:最近の変化、在宅生活の不安、要介護認定で伝えたいこと

このテンプレを全部埋める必要はありません。空欄があっても大丈夫です。思い出せる範囲で、まず書けるところから始めてみてください。

夫婦で分担するなら、一人が下書きをして、もう一人が「これもあったね」と足す形でも十分です。たとえば、実際に付き添いをしている人が身体の様子を書く。電話や手続きの担当をしている人が、通院や服薬、相談したいことを書く。そんな分け方でもかまいません。

完璧な文章にするより、生活の様子が伝わることを優先しましょう。

夫婦でメモを見るとき、意見が少しずれることもあります。

「そこまで書かなくてもいいんじゃないか」

「でも、先生には知っておいてもらいたい」

そんな会話になることもあるでしょう。そのずれは、どちらかが間違っているというより、親との距離や見ている場面が違うだけかもしれません。

だからこそ、二人で短く確認する時間には意味があります。

【夫婦で分けておきたいこと】
・親の普段の様子を思い出す人
・受診前メモを作る人
・診察に付き添う人
・医師に伝える内容を確認する人
・受診後に家族や兄弟姉妹へ共有する人

真美

テンプレがあると助かるね。白紙から書くのって、意外と大変だもん

信親

全部埋めなくてもいいからな。まずは気になることを3つ書くだけでも、かなり整理できると思うよ

医師には短く・事実で伝える

医師に伝えるときは、短く、事実を中心に話すのが伝わりやすいです。診察の場では、時間が限られていることが多く、家族も緊張しやすいものです。

あれもこれも話そうとすると、かえって要点がぼやけてしまうことがあります。まずは、いちばん困っていることを1〜3つにしぼって伝えましょう。

話す順番は、次の形にすると整理しやすくなります。

  1. 何が起きているか
  2. どのくらいの頻度か
  3. 家族がどんな介助をしているか
  4. 何が心配か

たとえば、次のような伝え方です。

・この1か月で、家の中で2回つまずいて転びそうになりました。今は入浴のときに家族が近くで見守っています。今後一人でお風呂に入るのが心配です。
・薬を飲んだか本人だけではわからないことが増えました。今は家族が毎日確認しています。飲み忘れが続くと体調に影響しないか心配です。
・最近、同じ話を何度もすることが増えました。火を消し忘れたこともあり、日中一人で過ごす時間が心配です。

このように、感情だけでなく事実を添えると、医師も状況を把握しやすくなります。もちろん、家族が不安な気持ちを話してはいけないわけではありません。

ただ、主治医意見書に関わる情報としては、「どんな生活上の困りごとがあるか」を具体的に伝えることが大切です。

診察室では、思っていたより自分の声が小さくなることがあります。言いたいことを準備していたのに、本人の横顔を見たら言えなくなることもあります。

それは、家族として自然なことだと思います。親を守りたい気持ちと、現実を伝えなければならない気持ち。その間で揺れるからです。

だからこそ、短いメモが助けになります。言葉に詰まったときも、紙に書いてあるだけで、少し落ち着いて話せることがあります。

本人の前で言いにくいことは、責めない言い方にする

本人の前では言いにくい内容もあります。物忘れ、失禁、怒りっぽさ、服薬ミス、火の消し忘れなどは、本人の自尊心に関わることもあります。伝え方に迷うのは自然なことです。

その場合は、受付で「家族から先生にお伝えしたいメモがあります」と渡せるか確認したり、診察前後に短時間だけ相談できるか聞いたりしてもよいでしょう。

医療機関によって対応は異なります。無理にその場で押し通そうとせず、できる形を確認するのが安心です。

本人の前で言いにくいことは、できるだけ本人を責めない言葉にしておくと伝えやすくなります。

たとえば、次のような言い方です。

【本人の前で言いにくいときの伝え方】
・本人は大丈夫と言っていますが、家族から見ると薬の飲み忘れが増えているように感じます
・できることも多いのですが、入浴や外出の場面では見守りが必要になってきました
・最近、同じことを何度も確認することが増えました。家族としては認知面の変化が少し気になっています
・失敗を責めたいわけではないのですが、火の消し忘れがあり、一人の時間が心配です
・本人の前では言いにくい内容もあるため、家族メモとしてお渡しします

こうした言い方なら、本人を否定する印象を少しやわらげながら、必要な情報を伝えやすくなります。

夫婦で受診に付き添う場合は、事前に「誰が話すか」を決めておくと、診察室で慌てにくくなります。一人が話し、もう一人はメモを見ながら補足する。あるいは、一人は本人に寄り添い、もう一人が医師にメモを渡す。

そんな形でも十分です。大切なのは、うまく話すことではありません。生活の困りごとが、医師に届くことです。

言えなかったことがあっても、自分を責めすぎなくて大丈夫です。家に帰ってから、「あれも言えばよかった」と思い出すことはよくあります。帰り道の車の中で、急に大事なことを思い出すこともあります。

そのときは、次回のためにメモに足しておけばいいのです。一度で全部伝えきろうとしなくても、少しずつ届く形にしていけば大丈夫です。

【無理にその場で伝えきらない】
本人の前で言いにくい内容や、診察中に伝えきれなかったことがある場合は、家族メモを渡せるか、次回受診で補足できるか、医療機関に確認してみましょう。対応は医療機関によって異なるため、無理にその場で押し通さなくて大丈夫です。

真美

本人の前で言いにくいことって、やっぱりあるよね。傷つけたくないし

信親

そうだな。だからこそ、責める言い方じゃなくて、事実として短く伝えるのがよさそうだ

うまく伝わらない時は同席・書面・包括相談でつなぐ

うまく伝わらないと感じたときは、同席、書面、相談先の力を使って、少しずつ情報が届く形を作っていきましょう。

一度の診察ですべてが伝わらなくても、それだけで失敗ではありません。診察時間、本人の受け止め、医師との関係、家族の緊張。いろいろな事情があります。

「うまく言えなかった」と感じたときほど、次につなげる方法をひとつ残しておくことが大切です。

家族が受診に同席する

まずできる工夫は、家族が受診に同席することです。本人が一人で受診している場合、ふだんの生活の困りごとが医師に伝わっていないことがあります。

本人が悪いわけではありません。「これくらい言わなくていい」と思っていたり、困りごとを忘れてしまったりすることもあります。

可能であれば、次の受診に家族が同席し、短いメモを持参しましょう。ただし、本人が同席を嫌がる場合もあります。そのときは無理に進めず、目的をしぼって伝えると受け入れやすいことがあります。

たとえば、次のような言い方です。

・最近の薬のことだけ一緒に確認したい
・転びそうになったことを先生に相談したい
・お風呂のことだけ聞いておきたい

「全部を話し合う」と思うと、本人も家族も身構えてしまいます。まずはひとつの困りごとからで大丈夫です。

親にとっても、病院に家族が一緒に来ることは、少し重く感じる場合があります。「自分はそんなに悪いのか」と不安になることもあるかもしれません。

だからこそ、同席の目的はできるだけ具体的に、やわらかく伝えたいところです。

書面で伝える

次に、書面で伝える方法があります。医師に直接話すのが難しい場合でも、家族メモを受付で渡せることがあります。

医療機関によって対応は違いますが、

「要介護認定の主治医意見書に関係するかもしれないので、生活状況のメモを先生に見ていただけますか」

と相談してみるとよいでしょう。

メモは長くしすぎず、A4用紙1枚程度にまとめると、診察の場でも確認しやすくなります。伝えたい気持ちが強いほど、あれもこれも書きたくなるかもしれません。けれど、最初は要点をしぼったほうが届きやすいこともあります。

書面にすると、自分の気持ちも少し整理されます。書きながら、「これは本当に心配していることなんだな」と気づくことがあります。

反対に、「これは今すぐではなく、次に相談してもいいかもしれない」と思えることもあります。メモは、医師のためだけではありません。家族自身が状況を見つめ直すための道具にもなります。

地域包括支援センターに相談する

さらに、地域包括支援センターに相談する方法もあります。

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしや介護に関する身近な相談先です。要介護認定の申請前後、在宅生活の不安、家族の負担、サービス利用の相談などに対応しています。

地域によって体制や名称、対応範囲に違いがあることもあります。それでも、「どこに相談したらいいかわからない」ときの入口になりやすい場所です。

すでにケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーに相談してもよいでしょう。

「主治医にどのように伝えたらよいか」

「受診時に何を整理すればよいか」

「家族の負担も含めて、どこまで話してよいか」

そうしたことを一緒に整理してもらえる場合があります。

要介護認定の申請中で、「主治医意見書はどうなっているのかな」と不安になることもあるかもしれません。進み方や確認できる内容は自治体によって異なるため、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに聞いてみると安心です。

相談することに、少し抵抗を感じる人もいるかもしれません。

「まだ相談するほどではない」

「こんなことで電話していいのかな」

「家のことを外に話すのは気が引ける」

そう感じるのは自然です。

でも、介護は家の中だけで抱えるほど、だんだん見えにくくなっていきます。外の人に話してみることで、自分たちが思っていたより頑張っていたことに気づくこともあります。

【談できる先】

・主治医
・地域包括支援センター
・市区町村の介護保険窓口
・ケアマネジャー
・病院の相談員
・医療ソーシャルワーカー
・訪問看護師

次につなぐ動き方

うまく伝わらなかったと感じたときは、次のように小さく動いてみましょう。

・受診後に、伝えられたこと・伝え忘れたことをメモする
・次回の診察で伝える内容を3つにしぼる
・家族メモをA4一枚にまとめ直す
・地域包括支援センターに相談し、状況を整理してもらう
・ケアマネジャーがいる場合は、医療との連携について相談する
・必要に応じて、市区町村の介護保険窓口に確認する

夫婦で対応している場合は、受診や相談の役割が片方に偏りやすいものです。通院の付き添いをする人、メモを作る人、地域包括支援センターや窓口に電話する人を分けるだけでも、負担感は少し変わります。

たとえば、次のような形です。

・実際の付き添いは妻がする
・夫は受診前のメモを一緒に確認する
・市区町村窓口や地域包括支援センターへの電話は夫がする
・受診後に、二人で「次にやること」を確認する

平等に半分ずつ分けることより、無理なく続けられる形にすることが大切です。

長く一緒にいても、夫婦だから何でもわかるわけではありません。相手が疲れていることに気づけない日もあります。自分のほうが大変だと思ってしまう日もあります。

言えばいいだけの「ありがとう」が、なぜか言葉にならないこともあります。それでも、役割を少し分けたり、メモを一緒に見たりするだけで、同じ方向を向き直せることがあります。

親の状態を伝えることは、家族だけで抱える作業ではありません。医療や介護の人たちにつなげていくための作業です。

全部を一人で背負わなくて大丈夫です。

真美

一回でうまく話せなかったら、落ち込みそうだな

信親

でも、次につなげられれば十分だと思うよ。メモを直したり、包括に相談したり、できることは残ってるから

まとめ:診断名より生活の困りごとを共有する

主治医意見書とは、要介護認定の際に、主治医が本人の心身の状態や医療面の情報をまとめる書類です。

家族が直接作成するものではありません。ただ、主治医が本人の生活状況を把握しやすくなるように、受診前にメモを用意しておくことは大切な準備になります。

特に意識したいのは、病名や診断の話だけでなく、「日常生活で何に困っているか」を伝えることです。

歩く、入浴する、服薬する、通院する、火を使う、夜間に起きる、物忘れがある。そうした毎日の中の小さな困りごとは、診察室では見えにくいことがあります。

家族メモを作るときは、次の4つを意識してみてください。

・症状:どんな変化があるか
・頻度:どのくらい起きているか
・危険:転倒や火の不始末など、心配なことはあるか
・介助:家族がどんな手助けをしているか

医師に伝えるときは、短く、事実を中心に話すと伝わりやすくなります。本人の前で話しにくい内容は、責める言い方ではなく、「家族から見ると心配です」「生活上、見守りが必要です」といった表現にして、メモで渡す方法もあります。

もしうまく伝えられなかったとしても、それで終わりではありません。次回の診察で補足する。地域包括支援センターに相談する。ケアマネジャーに聞く。市区町村の介護保険窓口で確認する。

次につなぐ動き方はいくつもあります。

今日ひとつだけやるなら、親の生活で「最近ちょっと心配になったこと」を3つ、メモに書いてみてください。

たとえば、次のようなことです。

・転びそうになったこと
・薬を飲み忘れたこと
・同じ話が増えたこと
・入浴や外出に付き添いが必要になったこと
・火の消し忘れが心配になったこと

きれいな文章でなくて大丈夫です。家族が見ている日常の記録が、必要な支援につながる入口になります。

そして、できればそのメモを夫婦で一度見てみてください。

「これは伝えたほうがいいね」

「これは私が気づいていなかった」

「次の受診では、この3つだけ話そう」

そんな短い確認だけでも、一人で抱え込む負担は少し軽くなります。

主治医意見書の準備は、難しい書類を家族が作ることではありません。親の暮らしの困りごとを、医師や相談先に届きやすい形に整えることです。

ただ、その準備をしながら、少し寂しさを感じることもあると思います。昔は何でもできていた親の姿を思い出して、今の変化をすぐには受け止められないこともあります。

「もっと早く気づいていればよかった」と思う日もあるかもしれません。けれど、介護の入口では、誰もが手探りです。

最初からうまく伝えようとしなくても大丈夫です。まずは、生活の中で見えていることを、少しだけ言葉にしてみる。その小さなメモが、親のこれからの暮らしと、支える家族の負担を見直すきっかけになるかもしれません。

大きく変わったわけではなくても、少しだけ見方が変わる。それだけでも、次の一歩は少し踏み出しやすくなります。

【今日できる最小の一手】
親の生活で「最近ちょっと心配になったこと」を3つだけメモしてみましょう。転倒、薬、物忘れ、入浴、火の管理など、短い言葉で大丈夫です。

真美

最初からちゃんと伝えなきゃって思うと、しんどいけど、3つだけならできそうだね

信親

うん。まずは生活の困りごとを見える形にするところからで十分だよ

まずは、3つだけ書いてみる。

その小さなメモが、主治医や地域包括支援センターにつながるための、現実的な一歩になります。

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